介護におけるポジショニングとは?目的やポイントを解説
介護

2022年5月9日

介護におけるポジショニングとは?目的やポイントを解説

 


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ポジショニングは、拘縮(こうしゅく)や浮腫(むくみ)の予防に効果が期待できるとされていますが、具体的な方法を学習する機会がないという方もいるでしょう。作業療法士や理学療法士といった専門職の方でも、経験によってポジショニングのスキルに差があるケースも珍しくありません。
介護サービスを提供する介護職員は、正しいポジショニングを理解して、実践することが大切です。そこで、介護におけるポジショニングとはどのようなものなのか、目的や具体的な方法、ポジショニングを実践するうえでの重要なポイントを紹介します。

1. 介護におけるポジショニングとは




拘縮や浮腫、呼吸機能の低下などが起こると、治療に時間を要します。特に拘縮が進むと、関節が一切動かなくなり手術をしなければならないことも少なくありません。体のトラブルを引き起こしたり、症状が進行したりすることがないように、ポジショニングを行う必要があるのです。
ポジショニングは、関節の拘縮や浮腫などを緩和させる方法であり、姿勢を安定させ、体重が各部位に分散されるようにします。体の機能を活性化させ、拘縮や浮腫を予防したり、体へのストレスを軽減したりといった効果も期待できます。
例えば、寝たきりになっている方は、頭と胸、太ももとふくらはぎなどにクッションを挟んで、体とベッドが触れる部分を増やすことによって姿勢が安定します。手や指が拘縮している方は、反発力があるボールを握り、指を開くといったことを行うことが多いです。
なお、拘縮や浮腫を緩和させる方法にはポジショニングの他に、動作練習や関節可動域訓練などもあります。
動作練習は、生活をするなかで体の関節を動かすよう練習をすることです。
例えば、立つ・座るといった動きや手首の関節を少しずつ動かすなどが挙げられます。関節可動訓練は、その名の通り関節を動かして可動域を維持するものであり、ストレッチを行います。動作練習や関節可動域訓練は、作業療法士や理学療法士に付き添ってもらい、指導を受けながら行うことが一般的です。
また、ポジショニングは利用者ごとに向き・不向きがあるため、アセスメントを実施することが大切になります。



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2. 介護におけるポジショニングの目的




介護におけるポジショニングの目的は、拘縮の予防や、筋緊張緩和、呼吸機能の改善や活動の向上などが挙げられます。以下の表にまとめました。

拘縮と変形の予防
拘縮とは、関節が正常な範囲で動かない状態です。
関節を動かさないまま寝たきりになっていると、関節が固まり変形することがあります。

褥瘡(じょくそう)の予防
褥瘡は、皮膚が炎症を起こす症状です。
長い時間一箇所に体重がかかっていると血行が悪くなり、血流が滞ります。
血流が滞った箇所が赤くなる、ただれる、傷ができるなど、皮膚のトラブルにつながるため注意しましょう。
褥瘡を予防するために、体勢を変えるポジショニングを行わなければなりません。

筋緊張緩和と調整
筋肉が緊張した状態が続くと拘縮が悪化するほか、筋肉が思うように動かせず怪我をするリスクも上がるでしょう。
筋肉の緊張と緩和の調整をすることで、拘縮の悪化や怪我の予防につながります。

呼吸の改善
長時間同じ姿勢でいると、体内に酸素を取り込みにくくなり、酸素が不足して呼吸をしにくくなります。
ポジショニングで体勢を変えると、酸素の取り込みや交換をしやすくなり、呼吸の改善に役立ちます。

浮腫の改善
長い時間同じ姿勢でいると、筋肉が収縮せず血流が悪くなるため、一箇所に血液が溜まり、体の一部がむくみます。
ポジショニングは、体を動かして筋肉の収縮で血流を促す目的もあるのです。

活動の向上
どのような場面でも、同じ姿勢を維持していれば良いわけではありません。
例えば、食事をしたり飲み物を飲んだりする際には、体を前に倒します。
目的にあったポジショニングをすることによって、利用者本人の身体機能を生かして、呼吸や血流などの機能を促進させることが大切です。


ポジショニングによって、病気の予防のほか、活動を向上させることにもつながります。

3. 長時間同じ姿勢でいることによる影響




長時間同じ姿勢で過ごすことによって、体にどのような影響を及ぼすのでしょうか。具体的に起こる体のトラブルを紹介します。

■拘縮(こうしゅく)


拘縮は、関節を動かしにくい状態を指します。関節とは、骨と骨が互いに動く状態でつながっている箇所で、関節の周辺には筋や皮膚の軟部組織があり、拘縮していると軟部組織が変化して関節を動かせる範囲が狭くなります。なお、関節が曲がったままの状態で伸びない症状を屈曲拘縮(くっきょくこうしゅく)、関節が伸びた状態のまま曲がらない症状を伸展拘縮(しんてんこうしゅく)と呼びます。

■浮腫(むくみ)


体の動きが少なくなると、筋肉の収縮がなくなり血流が悪くなります。腕や足の血液が心臓に戻りにくくなるため、脚や手の浮腫につながるでしょう。浮腫は、体がだるくなったり、疲れやすくなったりといった全身の症状につながります。
また、浮腫が長期化・慢性化することで、慢性下肢浮腫になったり下肢動脈瘤と呼ばれる血管の病気につながったりすることもあるため、注意が必要です。
急激に悪化したり、命に関わったりする病気ではないものの、体のだるさにより動きが鈍くなり、体の機能が低下していきます。さらに、足の浮腫が悪化すると、深部静脈血栓症と呼ばれる病気を引き起こし、重い症状を引き起こす可能性がある点に注意が必要です。

■褥瘡(じょくそう)


褥瘡は、床ずれともいわれる症状です。同じ姿勢で寝ていると、体の一部に体重がかかり圧迫されて血流が悪くなります。血流が悪くなることによって筋肉や皮膚組織が崩れて、赤みやかぶれなどの症状を引き起こします。

■呼吸機能の低下


長い時間同じ姿勢でいると、酸素を取り込み交換するという機能が低下し、体内が酸素不足を起こして呼吸機能が低下します。心臓のポンプ機能の低下により心不全になると、心臓・肺に送られる血液の量が減って、肺で酸素と二酸化炭素を交換しにくい状態になってしまいます。結果として全身が酸素不足になり、呼吸機能の低下、呼吸困難を引き起こすことがあるため注意が必要です。

■呼吸器の感染症


寝たきりになっている場合は、誤飲や胃からの逆流などのトラブルから、誤嚥性(ごえんせい)肺炎といった、呼吸器の感染症を起こしやすくなります。食事をする時に起こる誤嚥性肺炎は、食後に咳をしていたり食事中にむせたりする場合に注意しなければなりません。胃ろうといった経管栄養法であっても、誤嚥性肺炎を起こすことはあります。
さらに、むせたり咳をしたりといった症状がなくても、誤嚥しているケースがあります。また、体の麻痺がある場合、食べ物を飲み込む機能が低下していることがあり、食事をしているときに誤嚥しやすいです。

4. 介護においてポジショニングを実践する上でのポイント




正しい方法でポジショニングを実践しなければ、症状が進行するリスクがあるため、アセスメントでしっかりと身体の状態や症状を把握することが重要です。さらに、介護におけるポジショニングを実践するにあたっては、体の軸を整え、隙間を作らないこと、どのように重力がかかるのかを考えること、利用者の気持ちや状態を第一に考えることなどが大切です。介護においてポジショニングを実践するためのポイントを詳しく紹介します。

■体軸を整える


人間の体は、皮膚と筋肉と骨でつながっており、体の軸がゆがむと体の一部に負担がかかって筋肉の緊張や痛みが生じます。そのため、左右の肩を結ぶ線と、左右に出っ張った腰骨を結ぶ線が平行な状態で、背骨がまっすぐに垂直になっていることが重要です。
特に、拘縮や関節の歪みがある利用者さんに対しては、しっかりと体の軸が整うよう、肩と骨盤と腰のラインをチェックしましょう。

■すき間を作らない・埋める


体とベッド、椅子との隙間を埋めるためにクッションを利用します。ただし、体の一部にのみクッションを使わないように注意しましょう。
例えば、足首や膝の下などの隙間だけにクッションを入れると、クッションで支えていない箇所に負担がかかり、褥瘡ができたりするリスクがあります。脚の隙間を埋めるためには大きいクッションを使い、脚の付け根からクッションを入れて隙間を埋めましょう。

■重力の影響を考える


隙間だけを埋めるのではなく、該当する部位全体の圧力、体重のかかり方を考慮する必要があります。クッションを使って腰の位置に対してなるべく水平に四肢の関節部位(膝・くるぶし)がくるようにポジショニングをすると、体の歪みが整えられ、負荷がかかりにくい姿勢を維持できます。

■声かけをする


ポジショニングをする際には、利用者に声をかけて「これからポジショニングをする」ということを認識してもらいましょう。最初に声をかけるだけではなく、体を動かすたびに何をするのか伝える必要があります。
声かけをすると、体が動く利用者は自分で体を動かそうとするため、スムーズにポジショニングを行えるでしょう。

■力任せに行わない


ポジショニングは、力任せに行うのではなく、体のつくりを理解して行うと強い力を加えることなく体位を変えられます。力任せにすると利用者が痛みを感じたり、体に負担がかかったりするため注意が必要です。ポジショニングをする方と利用者の重心を近づけることによって、強い力を使わずにポジショニングを行えるでしょう。
なお、拘縮がある箇所を持つ際には、上から持つのではなく下から支えるようにします。指を使わず、腕や手の平でしっかり支えましょう。また、関節付近を持つことによって痛みを緩和できます。拘縮している部位は強く握らないよう、十分に注意しましょう。

5. 介護におけるポジショニングのまとめ




介護では、正しい方法でポジショニングを行うことで、拘縮や浮腫、呼吸機能の低下を予防できます。正しいポジショニングをしないと、治療に時間を要したり、症状を悪化させることにつながるため、注意しなければなりません。
こまめにポジショニングをして、寝たきりの方や体が不自由な方が活動しやすい環境を作ることも大切です。ポジショニングの必要性を理解し、深い知識を身につければ、介護職員としてのキャリアアップに役立つでしょう。




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この記事を書いた人

セントスタッフ株式会社
デジタルマーケティング部
井上優喜

求人あるあるの求人作成・記事執筆を担当。 介護士として様々な施設形態での勤務実績あり。求職者目線での記事作成が得意。

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